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「食育講座 シリーズ6 食品の安全(最終回)」
食品添加物、遺伝子組換え、アナフィラキシーショック、コンタミネーション、GAP、ポジティブリストといった食品の安全に関するキーワードについて解説します。
■食品添加物の安全性
食品添加物は、食品の製造の過程で、加工や保存を目的として使用されます。そして、食品添加物は次のように分類されます。
わが国で使用が認められている食品添加物としてリスト化されているものとしてつぎのように分類されます。
1.指定添加物(364品目)・・・厚生労働大臣が安全性と有効性を確認して指定されているもの
2.既存添加物(450品目)・・・天然添加物として使用実績が認められ品目が確定しているもの
3.天然香料や一般飲食物添加物
天然香料、一般飲食物添加物をのぞき、今後新たに開発される添加物は、天然・合成の区別なく指定添加物となります。
上記で認められていない添加物は食品に使用できません。このように使用することができるものをリストを作り公表し、リスト以外のものは使用できないという制度をポジティブリスト制度といいます。
食品添加物の安全性の考え方としては、
1.無毒性量
2.一日摂取許容量
3.食品添加物の使用基準
からなっています。
動物実験によって毒性がないという量(無毒性量)の100分の1を一日摂取許容量(ADI:Acceptable Daily Intakeともいいます)が決められます。
これは、一生食べつづけても安全と認められた量を体重1キログラムあたり1日に何ミリグラムまでと表されます。そして食品添加物の摂取量がADIを越えないように食品衛生法第7条の規定に基づいて使用できる食品の種類や使用量、使用目的、使用方法を制限しています。
こういった安全性の考え方の一方で、食品添加物の安全性に対する疑問も指摘されています。
食品添加物の中には、発ガン性や遺伝毒性(次の世代まで影響をおよぼす)、突然変異(遺伝子などになんらかの変異をおよぼす)をもつものがあると言われています。
食品添加物は毎日食品から摂取していること、何がどれだけ使用されているかがわかりにくい、キャリーオーバー(注)についても表示の必要がない、ADIは単独の数値であり、食品添加物の食べ合わせた場合の安全性(複合毒性)が不明であるという指摘もあります。
注:キャリーオーバー
最終食品に食品添加物が使用されていなくても、その食品の原料に使われた食品添加物がごく微量残り最終食品から検出される場合があります。
このように食品原料から最終食品へ持ち越される添加物をキャリーオーバーといいます。最終食品に対しては食品添加物としてしようされていないこと、またその効果が最終食品に発揮されていないことから表示は免除されます。
■遺伝子組換え食品の安全性
遺伝子組換え食品とは、微生物の遺伝子の一部を切り取り、農産物に組換えるという技術で作られた農産物やそれを原料にした食品を指します。
特定の除草剤を分解する性質を持った微生物の遺伝子を切り取り、それを組換えることで、除草剤に強い品種を作る、同じく害虫に強い品種を作るといった技術です。
これによって、農薬や除草剤の使用量が減るため経費節減、増収、作業の効率化や環境保全などにつながるというメリットがあげられています。
遺伝子組換え食品の問題点として指摘されているのは次のようなものです。
1.遺伝子組換えはもともと自然界に存在していたものではなく、種を超えた人工的なもののため、生態系のバランスを崩す可能性がある
2.これまでになかった毒素やたんぱく質が含まれる可能性があり、アレルギー症状を引き起こす恐れがある
3.除草剤に強い遺伝子が組み込まれている作物の場合、使用された除草剤が作物に残留する恐れがある
4.遺伝子組換え作物は開発されて10年程度であり、長期にわたってどのような影響がでるのかが未知数である
■アナフィラキシーショックとコンタミネーション
食物によって引き起こされるアレルギー反応は個人差があるものの、腹痛、下痢、嘔吐といった消化器系の障害や、皮膚炎、湿疹といった皮膚症状、咳やくしゃみ、呼吸困難といった呼吸器系の障害を引き起こします。
このアレルギー反応の中でも、特に重篤で生命にかかわるような症状をアナフィラキシーショックといいます。呼吸困難や血圧の低下、意識障害を引き起こし、死に至るケースがあります。
アレルギー反応は、体内にアレルギー原因物質を含む食品を食べることでおきます。体内に異物が入るとそれを排除しようとする免疫機能が働きますが、異物でなく無害なものであっても反応する場合があります。このような反応や過剰に反応することがアレルギー反応です。
アレルギー原因物質がごく微量でもアレルギー症状を出すことがあります。そのために、アレルギーを持つ人が食品を適正に選択できるように特定原材料5品目については、表示することが義務付けられています。また、20品目は表示推奨されています。
食品の製造過程で原材料としてアレルギー物質を使用していないにもかかわらず、製造ラインや調理器具などに洗浄後もアレルギー物質がごく微量残り食品に混入する場合があります。これをコンタミネーションといいます。原材料として使用していないため表示の義務はありません。しかし、ごく微量であってもアレルギー症状を引き起こす可能性があるので、厚生労働省では、疑わしい場合は、アレルギー疾患も持つ人向けに注意喚起をするように製造業者に求めています。
■ポジティブリスト制度と食品安全GAP
平成18年5月から残留農薬基準にポジティブリスト制度が導入されました。このポジティブリスト制度とは、農薬取締法によって登録された農薬がリストアップされ、そのリストアップされたものだけが、製造、輸入、販売、使用できるというものです。
ポジティブリスト 原則規制(禁止)された状態で、使用・残留を認める物をリストアップされたもの
ネガティブリスト 原則規制がない状態で、規制するものをリスト化するもの
ネガティブリストの場合、残留農薬が確認されても、リストに載っていないものは規制できないという問題点がありました。そのため、原則禁止とするポジティブリストが導入されました。
農薬使用時における注意点として、つぎのことがあげられます。
1.農薬使用基準の遵守
適用作物、使用量また濃度、使用時期、総使用回数など
2.農薬散布時のドリフト(注)の注意
近接する農地で栽培されている作物への飛散防止
注:ドリフトとは飛散のこと
今回のポジティブリスト制度導入で、生産者にとって次の点が課題となっています。
1.産地の栽培状況に応じた生産者へのきめ細かな指導の徹底
2.飛散(ドリフト)の影響を最小限とする防除技術の導入・普及
食品安全GAP(Good Agricultural Practices:生産者による適正農業規範)とは、農家の自主的なルールで、農作業ごとに、基本的な考え方や実施すべき作業内容をあらかじめリストアップし、その作業を記録保管し、食品の安全リスクを最小化しようというものです。
食品への不安要素が拡大する一方で、食品安全に関する情報が不十分であるという背景がありました。そのため、消費者が安心して食品を購入し消費できるために食品安全に関する十分な情報を提供するためのものです。
■BSE問題とトレーサビリティー制度
BSE(bovine spongiform encephalopathy)とは、牛海綿状脳症のことです。狂牛病とも呼ばれています。 1986年にイギリスで初めて報告された牛の病気です。これは、牛の脳がスポンジ状となり、歩行困難、起立不能などの症状を示す中枢神経系の病気です。プリオンというたんぱく質が異常化したものが原因といわれています。
ヒトへの感染は「新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病」がこのBSEとの関連を疑われています。この病気は、BSEに感染した危険度の高い牛の脳や眼(注)たことが原因ではないかと考えられています。
しかし、原因や感染ルートが完全に解明されていないために、今後の調査が待たれます。
わが国では、平成13年9月に第1例目が発生しました。平成19年7月現在33例確認されています。
国内でBSE感染牛が報告されたことを受けて、平成15年12月トレーサビリティー法(牛の個体識別のための情報の管理およびで立つに関する特別措置法)が施行されました。Trace(追跡する) Ability(できる)の造語でトレーサビリティーと呼ばれています。
この法律は次の項目を目的としています。
?BSEのまん延防止措置の的確な実施
流通のルートをさかのぼることで、原因をいち早く究明することができ、必要に応じて回収や撤去などの実行が可能となるため、まん延するのを防止したり、大きな影響が出ることを未然に防ぐことができ、被害を最小限に抑えることが可能となります。
?牛肉に対する消費者の信頼の確保
生産履歴や加工履歴、流通履歴を正確に迅速に入手することができるために、詳細な内容を知りたい時、疑問が生じた時など確認が可能となります。それは、消費者の信頼感につながります。
このトレーサビリティー制度によって、私たちが手にした食品が、いつ、どこで生産され、誰がどのように加工し販売したのかということをさかのぼって追跡できます。生産履歴ともいえます。現在は牛肉だけが法律によって定められています。
注:眼球や脳、扁桃、せき髄、脊柱、回腸遠位部は特定危険部位として指定され除去がおよび衛生的な処理が義務付けられています。また、輸入も禁止されています。
この特定危険部位とは、BSEの原因となる異常プリオンが蓄積しやすく、感染性があると指定された部位のことをいいます。
■食に関する法規
食の安全や国民の健康を確保するためにさまざまな法律が定められています。
法律名と法律の主旨はつぎのとおりです。
1.食品衛生法
食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もって国民の健康の保護を図ること
2.JAS法(農林物資の規格化および品質表示の適正化に関する法律)
農林物資の規格化と品質表示のルールを定め、その遵守を義務付ける
3.健康増進法
国民の健康増進の総合的な推進に関して基本的な事項を定め、栄養の改善その他国民の健康増進を図るための措置を講じ国民保健の向上を図る
4.食品安全基本法
食品の安全性確保のため、国、地方公共団体、事業者、消費者の役割を明確にし、基本方針を定める
5.牛の個体識別のための情報管理および伝達に関する特別措置法(牛トレーサビリティー法)
BSE感染牛が国内で確認され、個体情報を一元的に管理することで、まん延の防止と消費者の理解を深める
6.農薬取締法
農薬の安全な使用についてのルールを定めた
(牟田実の食育講座45)
2007.11.23 11:00:56
| きゃりあ塾
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