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「食育講座 シリーズ5 栄養の基礎知識(全6回)」
医食同源とは、病気の治療も普段の食事も、ともに人間の生命を養い健康を維持するためのもので、その源は同じであるということです。
今回は、肥満、生活習慣病、メタボリック症候群と食事について考えてみます。
■肥満とダイエット
肥満はさまざまな生活習慣病を引き起こす原因となります。肥満は、遺伝によるものや病気によるものなどもありますが、一般的には、消費エネルギーよりも摂取エネルギーが多い場合に肥満となります。 食べすぎや運動不足の習慣化によって肥満となります。
「肥満」とはどういう状況を指すのでしょうか。
大辞泉(小学館)では、「からだが普通以上にふとること」とあります。しかし、運動選手のように筋肉で体重が多い、普通以上にふとっているというのは肥満にはあたりません。
肥満とは、体脂肪が過剰に蓄積した状態のことを指します。ですから、体重は少なくても、体脂肪が多い状態は肥満にあたります。これを「隠れ肥満」と呼んでいます。
体脂肪が蓄積する場所によって肥満のタイプも異なります。内臓の周りにたまるのを「内臓脂肪型肥満」、おなかや腕、太ももなどの皮下にたまるのを「皮下脂肪型肥満」と呼ばれます。
また、おなかより上にたまるものを「上体型肥満(リンゴ型肥満)」といい、男性に多く見られます。おしりより下にたまるものを「下体型肥満(洋ナシ型肥満)」といい、女性に多く見られます。
肥満の基準としては、い<つか指標がありますが、よく使われているのにBMI(Body Mass Index)というのがあります。
標準体重(kg)=身長(m)× 身長(m)× 22
BMI=体重(kg) ÷ 身長(m)2
このBMIが25以上の場合を「肥満」、BMIが18以下である場合を「やせ」としています。
肥満となっている人がかかりやすい病気としては次のようなものがあげられます。
心肥大、心筋梗塞、糖尿病、高脂血症、脂肪肝、高血圧症、動脈硬化など
摂取エネルギー過多による肥満を解消するには、消費エネルギーと摂取エネルギーの収支バランスをとることです。
ダイエットとは、体重を減らすということではありません。余分な体脂肪を減らすということです。ダイエットというと「摂取エネルギーを減らす」と考えがちですが、この「摂取エネルギーを減らす」と同時に「消費エネルギーを増やす」という両方同時に行うことが大切です。
つまり、食事の内容や食事をとるリズムを見直すと同時に、適度な運動を心がけるということです。運動により脂肪を燃焼させ、筋肉をつけることで基礎代謝量を増やし、太りにくい体質にすることで徐々に解消していきます。
間違ったダイエット方法で、基礎代謝量を落としてしまうと、一日のエネルギー摂取量を制限して、体重を減らしてもダイエットを中止したとたんに以前の状態に戻るあるいは、それ以上に太ってしまう場合があります。これをリバウンドといいます。
「摂取エネルギーを減らす」ためには、食事の量や回数を減らすということではありません。
まず、朝食・昼食・夕食の間隔をあけすぎることのないように規則正しくとるようにする。そしてよく噛んでゆっくりと味わいながら食べるようにします。
食事の内容面では、全体のエネルギー量を考えたものにします。脂質や糖分をとり過ぎないように注意し、アルコールは控え、薄味を心がけるようにします。
■生活習慣病と予防のための食事
生活習慣病とは、長い間の不規則な食習慣、運動不足、飲酒や喫煙、ストレスといった悪い生活習慣によって引き起こされる病気の総称のことです。しかし、以前はこれらの病気は加齢とともに進行し発症すると考えられていたので「成人病」と呼ばれていました。
近年は子供にも「成人病」と同様の病態が増加傾向にあり、これらの病気の原因が加齢だけではなく、日常の生活習慣の様々なところから来ていると考えられるため「生活習慣病」と呼ばれるようになりました。
その代表的なものとして、糖尿病、高血圧症、高脂血症などがあげられます。これらは、いずれも自覚症状もなく、知らないうちに進行していく生活習慣病です。動脈硬化を引き起こし、心臓病や脳卒中の原因になります。
糖尿病とは血糖値(血液中のブドウ糖の濃度のこと)が平常より高い状態が続く病気のことです。血糖値が高い状態が続くと血管に関連するさまざまな合併症が起こります。
予防のための食事としては、自分の状態にあった一日の摂取エネルギー量を考え、各種の栄養素を過不足なく、規則正しくとるというのが基本です。
高血圧症は、最大血圧(収縮時血圧)が140mmHg以上、最小血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上の場合を指します。「血圧が高い」のを放置しておくと、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、腎不全などを引き起こし死につながるリスクが大きくなります。
高血圧症は遺伝的要素もありますが、喫煙や飲酒、不規則な食生活、運動不足、ストレスなどが血圧を上昇させる原因となります。
予防のためには、タバコはやめて、お酒も飲み過ぎないようにします。そして、塩分の多い食品を控えるようにし、ナトリウムを排泄するはたらきのあるカリウムや食物繊維の多い食品をとるようにします。また、血管を丈夫にするためたんぱく質を適量とります。
高脂血症とは、血液中の脂肪が増えすぎた状態のことです。放っておくと動脈硬化や心筋梗塞などを引き起こします。
食べ過ぎない、飲みすぎない、適度な運動毎日続けることが予防のポイントです。中性脂肪を体内にたまらないようにすることが大切です。
■メタボリックシンドローム(代謝症候群)
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満によって、様々な病気を引き起こしやすい状態のことです。
現在示されているメタボリックシンドロームの診断基準は、次のようなものです。つぎの1と2を両方満たすもの。
1.内臓脂肪型肥満であること
ウエストが、男性85cm以上、女性90cm以上
2.上記に加えつぎの3項目のうち2項目以上が該当する
(1)高血糖
空腹時血糖110mg/dL以上
(2)高血圧
最大血圧(収縮時血圧)130mmHg以上か最小血圧(拡張期血圧)85mmHg以上のいずれか、または両方
(3)高脂血症
血液中の中性脂肪150mg/dL以上かHDLコレステロール値40mg/dL未満のいずれか、または両方
このメタボリックシンドロームと診断された人は、糖尿病、高血圧症、高脂血症を発症しているケースが多く、動脈硬化を引き起こす可能性があります。そこで、メタボリックシンドロームという基準を持つことで、動脈硬化による心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などの予防を目指しています。
次回は「ライフステージと食」についてです。
(牟田実の食育講座No.39)
2007.10.29 21:43:16
| きゃりあ塾
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