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「食育講座 シリーズ3 おいしくいただくために 1 (全8回)」
今回から、3回目のシリーズがスタートします。このシリーズでは、「おいしさ」について考えてみます。
「食べる」とは単に生命を維持増進成長させる、そして空腹を満たすためだけではありません。私たち人間は、誰かと食事をすることで、意志を伝え合い、社会を構成し、そして食を通じてさまざまな「食行動」を共有しています。
サプリメントなどで、一日に必要な栄養素を摂ることは「食べる」とはいえません。
食べ物を食べておいしく感じるためには、さまざまな要素がありますが、基本は、健康で楽しい気分であることです。おいしく食べることができるということは、脳を活性化し消化酵素の分泌を促し、消化や吸収を円滑に行い、その結果摂取した食物を体の構成要素やエネルギーに変え、体調を整えることで、健康が維持増進されるということにつながります。
「食べる」ということは、「おいしい」ということが基本になるのです。
■おいしさとは
食生活において「おいしさ」の前提となるものは、食べようとしている食物が安全であるということです。ただし、この食品の安全性は、「おいしさ」を決める必要条件ではありますが、十分条件ではありません。
おいしさに関与する要因としては、つぎのようなものがあげられます。
1.宗教・食習慣・食文化・経済状況といった社会環境
2.気候や地理的環境などの事前環境
3.過去の食体験や食品に対する先入観
4.年齢・体力・空腹感・健康状態といった生理的要因
5.精神状態やストレスの状態といった心理的要因
6.食事をする空間、照明、食卓、食器、室内装飾、空調などの環境条件
7.個人の食嗜好
これらの要因の上に、私たちの持つ感覚で実際においしさを感じ取ります。
私たちが食物を口にした時、その食物を「おいしい」と感じるか「おいしくない」と感じるかは、「味覚」だけで決まるものではありません。
私たちが何かを食べる時のことを考えてみましょう。
まず、食物を見て形や色、つやなどからおいしそうかどうか判断します。
この「視覚」によるものは、食物そのものだけでなく、盛り付けたときの色合いや、食器との調和、盛り付け方などによって、おいしさを感じる度合いが違ってきます。
香りや匂いの「嗅覚」でもおいしさを感じます。
コーヒーの香り、焼きたてのパンの香り、うなぎの蒲焼の煙や焼き魚の香りなどを嗅いで、思わず飲んでみたい食べてみたいと感じます。
逆に、食べ物が腐った匂いや魚の生臭さなどは、逆に食欲をなくす要因ともなります。
食物を口に入れ、歯ごたえ、舌触り、のどごし、風味などを味わいます。「食感」といわれる口の中に食物を入れたときの「触覚」でおいしさを感じます。
こりこり・しこしこ・ふわふわ・もちもちなどの表現されるのは、この食感を表しています。(後述)また、温かい物は温かく、冷たいものは冷たくいただくというのも大切です。つまり、食物の温度もおいしさに大きく影響します。熱いものが冷めている、冷たいものが温まっているという状態はおいしいとは感じません。
まな板の上で包丁を使って何かを切る音や、おせんべいを噛む音、漬物をぽりぽり食べる音などの「聴覚」もおいしさを感じる重要な感覚です。
そして「味覚」で甘い、辛い、苦い、塩辛い、すっぱい、渋みなどを感じます。舌にあるみらい味蕾という細胞で味をとらえて、その刺激が脳に伝わって味を感じます。このみらい味蕾は舌に数千あるといわれています。味の感じ方には、個人差がありますが、味蕾で甘味、酸味、塩味、苦味、うまみ旨味の五つの味を感じるといわれています。この五種類が基本味と呼ばれています。
味覚には対比効果というものがあります。たとえば、スイカに塩をかけることで、スイカの甘さが引き立つ、お汁粉に隠し味として塩を入れることでより甘さを感じるといった片方の味が他方の味を強めるようなケースをいいます。逆に、片方の味が他方の味を弱める場合もあります。これを抑制効果といいます。コーヒーに砂糖を入れて苦味を抑えるというものなどです。
また味覚は、熱いものや冷たい物を一気に口にすると舌(味蕾)がしびれて味がわかりにくくなる。冷めた味噌汁を飲むと塩辛く感じる。冷たい飲料では甘さをそれほど感じないなど温度によっても敏感に反応します。
この味覚も年齢や環境によって多少変化します。若い時は、揚げ物や味の濃い食事を好んでも、年をとるとさっぱりした物を好むようになるとか、関東と関西とでは味付けが違うものの、出身地とは違う味付けを好むようになるなど味覚も変化する場合があります。
このようにおいしさは、数字で語れるものではありません。風邪をひいて鼻がつまり香りがわからない、暗いところで食べる、隣の人がクチャクチャと不快な音を立てて食べている、タバコの煙が充満しているなどの状況ではおいしく感じることができません。黒い器に緑茶を入れて飲んでもおいしくありません。おいしくいただくためには、五感がうまく働く状態、つまり健康であることが大切です。また、周りの人に不快な思いをさせないためにエチケットやマナーを守るなど、「おいしさ」を感じるためにはさまざまな要素があります。
■おいしさを作る雰囲気作り
おいしくいただくためには、食卓の演出はかかせません。料理の内容をどうするか、誰と食事をするか、そしてゲストの嗜好はどうか、季節に合わせた食材や盛り付けるための食器やテーブルクロスはどうか、席順をどうするか、その他照明、BGMなど、料理やその提供方法、料理を食べる空間を心地よい場所にアレンジすることが大切です。こういった工夫全般をテーブルコーディネートと呼んでいます。
テーブルコーディネートというと、テーブルを食器や料理で華やかにデザインするといったイメージがあります。テーブルに花をかざり、しょくだい燭台を置いた芸術的な素敵な食卓を見かけます。
しかし、中には単なるテーブルアートではないかと疑うようなものもあります。飾った花の香りや花粉が料理の味や香りに影響を与えるのでは、、燭台を置くことで相手の顔がみえにくくなるのではと感じ、実際にそこでおいしく楽しく食事をいただくというシーンのイメージにつながりません。
食卓を演出するとは、あくまでおいしくいただくための食のシーンがイメージできなければなりません。
■おいしさの表現
おいしさというのはあくまで感覚的なものなので、そのおいしさを言葉で表現するのはなかなかむずかしいと思われます。日本語には、そのおいしさや食の特徴を表したことばがあります。最近はあまり使われなくなりました。これらの言葉も一つの食文化です。私たちが、適切にこれらの言葉を使うことで食文化を守っていくことでもあります。
●あつあつ・・・料理などができたてで熱いこと。また、そのさま 「焼きたてのあつあつ」
●かりかり・・・水分や脂肪分がなくて堅く、噛むと歯切れのいいさま 「ベーコンをかりかりに焼く」
●こりこり・・・堅くて歯ごたえのあるさま。また、それを噛んだときの音を表す語 「たくあんのこりこりした歯ざわり」
●こんがり・・・ちょうどよい程度に焦げるさま 「パンをこんがりきつね色に焼く」
●さくさく・・・野菜などを刻んだり歯でかんだりするときの軽快な音を表す語 「リンゴのさくさくとした歯ごたえ」
●しこしこ・・・食べ物を噛んだときの、弾力に富んで歯ごたえがあるさま 「しこしことした歯ざわり」
●しゃきしゃき・・・ものを噛んだり切り刻んだりするときの、歯触りや切れ味がよいさま。また、その音を表す語 「新鮮な大根のしゃきしゃきとした歯ざわり」
●ねっとり・・・とろりとしてねばりけのあるさま。また、ねばねばするさま 「ねっとりとした舌ざわり」
●ほくほく・・・焼いたりふかしたりした栗・芋などの、水分が少なくてやわらかいさま 「ほくほくした焼き芋」
(小学館 大辞泉から引用)
次回は「世界の料理を知る」です。
(牟田実の食育講座 No.18)
2007.07.31 10:17:30
| きゃりあ塾
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