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「おいしさの崩壊」
おいしさとは食物の味や素材によって決まるものではありません。
まず、健康でなければおいしく感じることができません。健康とは、体だけでなく心配事や過度なストレスがないなど心の健康も含みます。さらに、個人の嗜好やこれまでの食体験や食経験といった食文化や食習慣もおいしさに大きな影響を与えます。
電車やバスの中での飲食。朝ごはんはとらない。体型が気になりダイエットに関心がある。
その一方で飲料やお菓子の新製品には敏感に反応。
同時に生活習慣病の低年齢化もみられます。
そこには、おいしさを追求する姿は見えません。
ライフスタイルの多様化がそのまま食の多様化につながり、そこから新しい食の問題点が起こっています。
果たして今の大学生は自分たちの食生活にどのような意識をもっているのでしょうか。
そして、彼らの食意識からいったい何がみえるのでしょうか?
6月に東京と札幌の大学・専門学校で、学生約2,000名を対象とした朝食と昼食に関する食意識調査を実施しました。
題して「おいしさの崩壊」
これから数回にわたりシリーズで掲載してきます。
今回の調査のきっかけは、ある大学生の言葉からです。
「お金が無いから、お昼はいつもヤマザキです」
その時は意味がよく理解できませんでしたが、一緒にコンビニのパン売り場にいって理解できました。
メロンパン5個入りがなんと110円、スティックパン9本入りが179円。
(このあたりのいきさつは、「食について考える」おにぎり130円は高いの安いの?に記載がありますので、参照してください)
自分の身に置き換えて,このメロンパンを5個食べたことを想像しただけで、胸焼けし、私の中の「おいしさ」という概念が一気に崩れていくような気がしました。
「おいしさを感じる」というのは、健康である証拠と考えています。
「おいしさ」というのは、単に食事の素材が高級であるとか味が良いということではありません。おいしく感じるにはさまざまな要素が必要です。体が元気であっても、何か心配事や過度なストレスを感じていると、食べ物をおいしく感じることはできません。体調、空腹感、個人の嗜好、食体験、素材や調理方法のほかに、食べる雰囲気やBGM誰と食事をするか、さらには経済状況や生活環境といった外部環境要因も大きく影響します。
おいしく感じられるということは、まさに人にとって様々な要素が良い状態であってはじめて感じられるものだと思います。つまり、健康でないと「おいしく」感じられないということです。
この学生は、「お金が無いから」といいながらも、iPod(アップルコンピューターの携帯型デジタル音楽プレイヤー)を持ち、携帯電話やノートパソコンは持っています。
つまり、正確には「お金がないからヤマザキ」なのではなく、お金を使う対象として、食の「優先順位が低い」のです。
そうするとなぜ食は優先順位が低いのでしょう。
「我慢ができない」「キレやすい」「少年の凶悪犯罪の増加」は食生活と関連があるという指摘もあります。この因果関係を証明することは極めて難しいことです。
当然ながら、今回の調査内容や方法では因果関係を分析することも推測することもできませんが、何かの兆候をみることはできるかもしれません。
また、これから社会人となり、親となる世代の「食」に対する意識を知ることは、これからのわが国の健康状態や経済状態を知ることにもつながるかもしれません
そのようないくつかの大きな命題を持って、調査を実施し、これを一つの参考としながら若い世代の食意識について考えてみることとしました。
調査のプロフィールはつぎのとおりです。
●調査時期:2006年6月
●調査方法:アンケート形式による記入回収方式
●有効回答数:1,960名(男性1,101名 女性859名)
●調査対象年齢:18歳(1,373名)、19歳(277名)、20歳(95名)、21歳(72名)、22歳以上(141名)、無回答(2名)
●調査にあたりましては、学校法人吉田学園 総合福祉専門学校小川博子副校長、東京女学館大学 石上七鞘教授、同 山本芳美教授、明治大学商学部 小川智由教授には、多大なご理解とご協力をいただき、この場を借りて心からお礼申し上げます。
つづく
2006.10.06 08:15:59
| 食彩人
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