夢と魔法の王国ディズニーランドには数多くのエピソードがあります。
これからお話しすることは、そんな話の一つです。
以前、ダンサーにこんな話を聞いたことがあります。ショーが終わるとゲストにバイバイと手を振ってあいさつします。 車いす席というのがあって、そこは車いすで来られているゲストの専用席です。そこでは、「バイバイ」ではなく「またお会いしましょう」というのだそうです。
その話を聞いた時は、「へえーそうなんだ」という程度でした。
先週、茨城県にある病院のスタッフ研修にうかがいました。看護師600名、医師も200名以上いる大病院です。
研修の合間に受講生である看護師さんからこんな話を聞きました。
数年前、彼女が担当している患者さんで10歳になる女の子がいました。白血病で骨髄移植しか助からないという状況だったそうです。残念ながらドナーがみつからず、体力もかなり弱っていたので、たとえドナーがみつかっても心臓が耐えられそうもない状態でした。 残酷なようですが、あとは死へのカウントダウンとなるわけです。
本人も状況が分かっていて、気丈にも「病気になったのは残念だけど、病気になって初めて知ったすばらしいこともたくさんある」と友達に手紙を書いたりしていたそうです。
まだ元気なうちにディズニーランドに行きたいという本人の希望もあり、主治医と相談し、主治医と担当看護師が同行して、ご両親、お友達と一緒にディズニーランドに行くことになりました。車いすでのツアーです。
みんなでショーを見ました。ショーの最後にダンサーがバイバイと手を振ってゲストにあいさつしています。そして、ダンサーが車いす席にあいさつに来てくれました。
するとダンサーは彼女の手をそっとにぎって「またおあいしましょう」と声をかけてくれました。
私に話をしてくれたその看護師さんはそれを見て大きな衝撃を受けたそうです。
他のゲストと同じように「バイバイ」とあいさつされたら、患者である少女にとっては人生とのバイバイでもあるわけです。
「またお会いしましょう」そう声をかけられて、きっとその少女は「また来るね」と心の中で答えたにちがいありません。
はじめにダンサーから聞いた話がここでつながりました。そういうことだったんだ。
言葉一つで、十分に人にやさしさや生きる勇気を与えることができるということをあらためて感じました。
残念ながらその少女は亡くなりました。
話をしてくれた看護師さんはその後、病室に行って、(病室を)出るときには、患者さんに「おやすみ」とか「バイバイ」ではなく、「また来るね」と言って出るようになったと話されていました。