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WTO(世界貿易機関)のファルコナー農業交渉議長が、WTOの加盟国に議長声明を提示しました。
この議長声明について日本ではあまり大きく報道されていませんが、実はこの内容は、まさに日本にとって黒船がやってきたという内容です。
太平の眠りを覚ますその内容とは・・・
日本の食料自給率は40%(カロリーベース)。日本の農業従事者のうち65歳以上が占める割合は58.6%(農林水産省データ)。これだけみても、日本の農業は黄色信号から赤に変わりつつあるという感じです。
一方で農産物の自由化の要望は強く、そのままそれを受け入れると一気に日本の農業が壊滅的になるということで、これまで長期間保護政策をとってきました。
たとえば、コメ(精米)は、778%。雑豆(えんどう豆)は、1,083%、こんにゃくいも 1,705%、落花生は593%というとてつもない関税がかけられています。
具体的には、輸入時の原価100円のものに10%の関税つき新たに輸入原価が110円ということになります。100円のこんにゃくいもであれば、それが1,805円ということになります。つまり、100円で輸入されたものに、輸入手続時に、前者は100円、後者は1,705円分の税金を払ってはじめて輸入できるというものです。商売上で考えるとそれが原価ということになります。
このことを消費者の立場で見てみると、高い関税をかけるということは、輸入の農産物と国産の農産物の価格差を調整しようということですから、私たち消費者は、あえて価格の高い農産物を買わされているということになります。言い換えれば、消費者は安いおコメや豆を本来は買うことができるのに、一部の農家を守るために、多大な出費を強いられているということになります。そして、この出費は消費者が負うということになります。ここだけ見ると「けしからん」と消費者の立場では言いたくなります。
さて、今回のファルコナー農業交渉議長の声明は、このように農産物の自由化の対象から除外する「重要品目(タリフラインとよばれています)」の数を、現在の数の1%?5%にするというものです。
まさに消費者の気持ちを代弁してくれているようです。
農水省の資料によれば、「重要品目」の数はコメ17、小麦20、砂糖56、乳製品47など1,326あります。
もし、その1%であればは13品目、5%は66品目ということになります。この議長声明がそのまま導入されると、日本が高関税で保護したい農産物の多くは重要品目とならないで、大幅な関税削減を強いられることになります。これは、安い農産物が無秩序にどんどん入ってくることで、内外価格差が逆転している現状を考えると、日本の農家・農業は厳しい状態に追い込まれることになります。
日本では、コメだけでも一般の精米、玄米、せんべいなどの原料となる米粉、コメを原料にした調整食料品など17品目あります。 もし、仮に重要品目が1%となればコメさえ守れなくなるのです。
現在、日本は最大でタリフラインの15%を重要品目として認めるよう求めています。これでも最大限の譲歩といえるでしょう。
まさに「農業政策の太平の眠りを覚ます黒船来襲」状態です。
消費者の立場からすると、市場の自由競争を当たり前のことで、その結果安く農産物が手に入るのは良いことだと感じるかもしれません。
しかし、食料ということであると、農産物の自由化は単純に消費者にとって朗報というわけにはいかないむずかしさがあります。
万が一、天候不順や災害、テロや国際紛争、国際的なマーケットの状況などで、日本に海外から食料が入らなくなった場合、国内自給ができない状況ですので、私たちの食料が確保できないという大変な事態となります。
水産物はすでに各国の争奪戦が始まっています。日本の近海で取れて、日本の港で水揚げされた水産物が外国に買い付けられて輸出されているという現実があります。
また、関税化は、離島や山間地などの雇用、収入を支えるという側面もありました。これも一気に崩壊してしまいます。これにより地域間格差の拡大なども考えられます。
今後のWTOの交渉の中で、「重要品目」を上限関税の対象にすべきだという意見と、対象から除外すべきだという意見があります。今回の議長声明の中には、この上限関税についての言及はありませんでしたが、もし、「重要品目」にも適用する形で、上限関税が導入されれば、コメ(精米)をはじめとする高関税品目が多い日本はさらに打撃となる可能性があります。
日本時間5月16日夜、パリでWTOの新多角的貿易交渉の非公式閣僚会議が開催されました。そこで決まったことは年内の最終合意をめざすということです。さて、どうなるのでしょうか。この黒船の影響は・・・
2007.05.19 07:26:05
| 食彩人
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